不動産投資・運用

不動産投資の売却ガイド|税金・費用・流れと高く売るコツをわかりやすく解説

不動産投資の売却は、居住用マンションとは判断のポイントが異なります。価格は主に収益還元法(純収益÷還元利回り)の影響を受けやすく、買主の多くが融資を利用するため銀行評価が価格「」の上限になりやすいうえ、減価償却の影響で利益が出ていなくても譲渡所得税がかかる場合があります。

本記事では、売却する理由から価格の決まり方、税金・費用、流れと必要書類、高く売るコツまで、売却の全体像をガイドとして順に整理します。

不動産投資の売却を検討する主な理由

資産の組み替え・運用状況の悪化・相続など不動産投資の売却を検討する主な理由のイメージ
売却は、購入時から見据えておきたい出口戦略の一環です。投資用物件を所有するオーナーの代表的な売却理由は、大きく3つあります。 ローンの残債がある状態で売却できるのか詳しく知りたい方は、「不動産投資は途中で売却できる?ローンの残債がある場合の対処法を解説」もあわせてご覧ください。

資産の組み替え・資金化|まとまった資金が必要になったとき

教育費や住み替え、別の投資対象への振り替えなど、まとまった資金が必要になったタイミングで、保有する投資用物件を現金化するケースです。資産配分の見直しも含め、売却が出口戦略の一つになります。

運用状況の悪化|空室・家賃下落・修繕費や返済の負担増

空室や家賃の下落、修繕費・修繕積立金の値上げ、金利上昇による返済負担の増加などで収支が悪化し、損失の拡大を避けるために売却を検討するケースです。収支のバランスが崩れてきたら、保有か売却かを見直す判断材料になります。

相続・保有方針の見直し|相続税の納税資金や管理負担の軽減

相続で取得した投資用物件を、相続税の納税資金の確保や、管理の手間・負担の軽減のために売却するケースです。遠方で管理が難しい、複数の相続人で分けたいといった事情から売却が選ばれることもあります。

不動産投資の売却タイミング|判断の入口となる3つの観点

保有期間・減価償却・相場や金利から不動産投資の売却タイミングを判断するイメージ
売り時は、税金・収支・相場など複数の要素を合わせて判断します。本章では、判断の入口となる3つの観点を紹介します。なお、所有5年超だけでなく、所有から10年・15年・20年といった年数の節目も、出口戦略を見直す一つのタイミングになり得ます。 何年目に売るのが最適かをより詳しく知りたい方は、「投資用マンションの売却タイミングはいつが正解?何年目に売るのが最適かを解説」もあわせてご覧ください。

保有期間5年超|長期譲渡になると譲渡所得税の税率が下がる

所有期間が売却した年の1月1日時点で5年を超えると「長期譲渡」となり、譲渡所得税の税率が39.63%から20.315%に下がります。なお、この所有期間は購入日から売却日までの実日数ではなく、売却した年の1月1日を基準に数える点に注意が必要です。

国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額の計算国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算

減価償却が終わる前・大規模修繕の前|収支と売りやすさの節目

減価償却期間が終了すると節税効果が薄れやすく、その前が一つの売却の節目になりやすいと言われています。大規模修繕や修繕積立金の値上げの前も、追加の負担が発生する前に検討する節目になり得ます。実際の判断は、物件ごとの収支や状態を踏まえて行うことが大切です。

相場・金利の動向|価格指数や市況を確認して判断

市況は、国土交通省の「不動産価格指数」などの公的データで確認できます。金利が上がると買主の借入コストが増え、価格に影響することもあるため、金利の動向もあわせて見ておくと判断の助けになります。統計は出典名・調査時期を確認したうえで参照しましょう。

国土交通省 不動産価格指数

売り時の見極め方や判断材料について詳しく知りたい方は、「投資用不動産の売却タイミングはいつ?売り時の見極め方と判断材料をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。

不動産投資の売却価格はどう決まる?収益還元法と銀行評価

収益還元法と銀行評価から不動産投資の売却価格が決まる仕組みのイメージ
投資用物件の価格は、マイホームと異なり、物件の収益性の影響を受けやすいのが特徴です。価格の中心となる収益還元法、銀行評価、利回りの見方を整理します。

収益還元法|純収益(NOI)÷還元利回りで価格を試算

収益還元法とは、物件の収益性から価格を求める方法です。たとえば、年間家賃150万円から運営費30万円を差し引いた純収益(NOI)120万円を還元利回り5%で割ると、120万円÷5%=2,400万円と試算できます。投資用ではこの考え方が中心になりやすく、取引事例比較法や原価法は補助的な位置づけです。数値は試算例で、実際の条件によって変わります。

銀行評価が価格の上限になりやすい|築年数・耐用年数・旧耐震が影響

投資用は買主の多くが融資を利用するため、金融機関の担保評価が売却価格の上限になりやすい傾向があります。築年数や法定耐用年数、旧耐震かどうかは評価に影響しやすい要素です。ただし、評価を超える価格を提示する買主が現れることもあるため、絶対的な上限と決めつけず複数の要素で判断しましょう。

表面利回りと実質利回りの違い|想定条件で数値が変わる点に注意

利回りには、家賃収入を価格で割った表面利回りと、管理費・修繕積立金・空室率などを反映した実質利回りがあります。広告や資料の利回りは想定値であり、実際の運用結果と異なる場合があるため、表面・実質のどちらか、想定条件もあわせて確認しましょう。

不動産投資の売却でかかる税金と確定申告

譲渡所得税や消費税など不動産投資の売却でかかる税金と確定申告のイメージ
この章では、売却後に自分で申告・納税する税金と確定申告を扱います。ポイントは、利益が出ていなくても譲渡所得税が課税される場合がある点です。なお、印紙税や登録免許税は申告不要の実費のため、次章『不動産投資の売却でかかる費用』でまとめて解説します。

譲渡所得税|譲渡所得×税率(短期39.63%・長期20.315%)

譲渡所得税とは、不動産の譲渡益にかかる所得税・住民税・復興特別所得税の総称です。譲渡所得(売却価格−取得費−譲渡費用)に、短期譲渡(所有5年以下)39.63%/長期譲渡(所有5年超)20.315%の税率をかけて計算します。建物の取得費は、減価償却費相当額を差し引いた金額です。なお、税率は2026年7月時点の情報で、今後変更される可能性があります。

国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

譲渡所得税は売却価格が購入価格を下回っても課税されることがある

建物は保有中に減価償却が進み取得費(簿価)が下がるため、売却価格が購入時を下回っても、計算上の譲渡所得が生じて課税されるケースがあります。「売却益が出なければ課税されない」と考えていると、想定外の税負担や申告漏れにつながりかねません。購入時の売買契約書や減価償却の計算資料を早めにそろえ、税理士等の専門家に確認しながら試算しておくと安心です。

消費税|基準期間の課税売上高1,000万円超なら建物部分が課税対象

基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税事業者は、建物部分の売却に消費税の納税義務が生じる場合があります(土地は非課税)。個人の売却は多くのケースで原則対象外ですが、判定が複雑な場合は税理士等に確認しましょう。

国税庁 No.6601 申告と納税

不動産売却後は確定申告が必要|損失でも申告を推奨

利益が出た場合は、原則として売却した翌年の2月16日〜3月15日(年により変動する場合があります)に確定申告を行います。購入時・売却時の売買契約書、費用の領収書、譲渡所得の内訳書などが必要になるケースが多いため、早めに整理しておきましょう。損失でも申告しておくと、同じ年の他の不動産の譲渡益と相殺できる場合があります。ただし、投資用の譲渡損失は給与所得などとの損益通算・繰越控除の対象にはなりません。 確定申告に必要な書類や書き方、期限について詳しく知りたい方は、「投資マンションの売却後に確定申告は必要?書類・書き方・期限を初心者向けに徹底解説」もあわせてご覧ください。

不動産投資の売却でかかる費用

仲介手数料・印紙税・抵当権抹消費用など不動産投資の売却でかかる費用のイメージ
売却時の費用は、売却価格の数%が目安となるケースが多くなります。手取り(手残り)は、売却価格からここで挙げる費用と前章の税金を差し引いて見積もります。主な費用項目は次のとおりです。
費用項目 金額の目安
仲介手数料 売買価格×3%+6万円+消費税(800万円超の場合の上限)※800万円以下は2024年7月施行の特例により最大33万円(税込)となる場合あり
印紙税 契約金額に応じて数百円〜数万円(軽減税率あり)
抵当権抹消の登録免許税・司法書士報酬 不動産1個1,000円+報酬1〜2万円程度
ローン繰上返済手数料 無料〜数万円程度(金融機関により異なる)

仲介手数料|売買価格×3%+6万円+消費税(800万円超の場合)

仲介手数料の上限は、売買価格800万円超の場合、速算式(売買価格×3%+6万円+消費税)で求められます(800万円以下の場合は、2024年7月施行の特例により最大33万円(税込)となる場合があります)。 たとえば売買価格2,000万円なら約72.6万円です。買主との直接取引では、仲介手数料は0円になります。売主側を手数料0円とする仲介会社もありますが、その場合は買主側から手数料やコンサルティング料を受け取る分、売買価格が上乗せされるケースもあります。 その結果、直接販売を行っていない仲介会社経由の売却は、直接販売できる会社の買取金額より手残り(実質的な手取り)が少なくなる場合もあります。比較の軸は金額の名目ではなく、実質的な手取りに置くことが大切です。

印紙税|契約金額に応じて数百円〜数万円(軽減税率あり)

売買契約書に貼付する印紙税は、契約金額に応じて数百円〜数万円かかります。令和9年(2027年)3月31日までは軽減措置が適用され、契約金額1,000万円超5,000万円以下の場合は1万円です。適用期間は今後変動する場合があるため、契約の際に最新の情報を確認しましょう。

国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表

抵当権抹消の登録免許税・司法書士報酬|不動産1個1,000円+報酬1〜2万円

ローンを完済すると、設定されていた抵当権を抹消する手続きが必要になります。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、マンションの場合は土地・建物で通常2,000円です。司法書士に依頼する場合は、報酬として1〜2万円程度が目安となります。

法務局 住宅ローン等を完済した方へ(抵当権の登記の抹消手続のご案内)

ローン繰上返済手数料|無料〜数万円が中心だが定率型で高額になることも

売却に伴いローンを全額繰上返済する場合、金融機関へ手数料がかかることがあります。無料〜数万円程度が中心ですが、残債の1〜2%程度の定率型では高額になることもあるため、事前に金融機関へ条件を確認しておくと手取りの見通しが立てやすくなります。

賃貸中・ローン残債があっても売却できる?注意点を整理

オーナーチェンジやオーバーローンなど賃貸中・ローン残債がある物件の売却の注意点のイメージ
賃貸中でも、ローン残債があっても、売却できるのが一般的です。代表的な2つのケースの注意点を整理します。

オーナーチェンジ|入居者がいるまま売却できる

賃貸中の物件は、入居者がいるまま所有者だけが変わる「オーナーチェンジ」で売却するのが一般的です。貸主都合での退去は借地借家法上、原則として認められないためです。賃貸借契約や敷金は買主に承継されるため、契約内容や賃料の状況を整理しておきましょう。

ローン残債・オーバーローン|残債と売却価格の関係を確認

残債がある場合は、売却代金で完済して抵当権を抹消する流れが基本です。売却価格が残債を上回ればその差額が手元に残りますが、残債が上回るオーバーローンでは不足分を自己資金で補填する必要が生じる場合があります。まずは残債と売却価格の見込みを確認し、資金計画を立てておきましょう。

不動産投資の売却の流れと必要書類

査定から媒介契約・売却活動・売買契約・決済引渡しまで不動産投資の売却の流れと必要書類のイメージ
売却は、査定から引き渡しまで段階的に進みます。投資用ならではの手続きを含め、時系列で整理します。

査定〜媒介契約|信頼できる会社に相談し依頼先を決める

最初に収益還元法を踏まえた査定を受け、依頼先を決めて媒介契約(一般・専任・専属専任の3種類。専任系は有効期間最長3か月で、レインズへの登録や報告義務あり)を結びます。投資用は多数の会社へ一斉に依頼すると、所有者リストとして情報が出回るリスクや、実現不可能な高額査定を提示され媒介契約を結んだもののまったく動きがない状態となるリスクがあるため、まずは信頼できる会社に相談する進め方がおすすめです。早期の現金化を重視するなら買取という選択肢もあります。 仲介と買取の違いについて詳しく知りたい方は、『投資用マンションの仲介と買取の違いは?「実質的な手残り」で考える本当の選び方』もあわせてご覧ください。

売却活動〜売買契約|賃貸中は室内の内覧が基本的にできない点に注意

売却活動に入り、購入希望者との条件交渉を経て売買契約を結びます。賃貸中の物件は入居者が居住しているため、室内の内覧は基本的にできません。そのため、賃貸借契約書や現行賃料などの資料で収益性を示すことになります。契約時には、登記識別情報(権利証)や印鑑証明書、本人確認書類などが必要です。

決済・引渡し〜賃貸人の地位承継|賃料・敷金の精算と入居者への通知

決済・引渡しの際には、賃料や敷金を日割りなどで精算し、抵当権の抹消やローンの一括返済を行います。売却後は賃貸人の地位が買主に引き継がれるため、入居者に賃貸人が変わったことを通知します。

不動産投資の物件を高く売るためのポイント

査定根拠の確認や投資用に強い会社選びなど不動産投資の物件を高く売るためのポイントのイメージ
事前の準備と依頼先の選び方によって、結果が変わることがあります。押さえておきたいポイントを整理します。

査定額と根拠を確認する|投資用は一括査定サイトへの一斉依頼を避け信頼できる会社に相談

査定では金額だけでなく根拠も確認しましょう。投資用の場合、一括査定サイト等を利用すると、不特定多数の業者から営業連絡が入るほか、所有者リストとして情報が出回るリスクがあります。また、競合を出し抜くために実現不可能な高額査定を提示され、媒介契約を締結したもののまったく動きがない状態となるリスクもあります。まずは実績があり信頼できる会社に絞って相談するのがおすすめです。特に販売が得意な会社と直接やり取りできた場合、思わぬ高額査定につながることもあります。

投資用に強い会社を選ぶ|収支・税務・賃貸借の知識がある依頼先

収支計算や税務、賃貸借契約の承継など、投資用ならではの知識を持つ会社を選ぶと、収益性を正しく評価してもらいやすくなります。実績や専門性を確認しながら投資用に強い会社を選ぶことが、納得のいく売却につながりやすいと言えます。

書類と情報の準備|収益性を示す資料をそろえる

賃貸借契約書、現行賃料、入居時期などの賃貸状況(入居中/空室)がわかる資料、修繕履歴、耐震関連の資料など、収益性と状態を示す書類をそろえておくと、査定や交渉を進めやすくなります。買主は物件の数字で判断することが多いためです。

不動産投資売却の第一歩は「価格を知ること」から

WEB査定で現時点の価格を知ることが不動産投資売却の第一歩になるイメージ
売却を進めるうえでは、まずお持ちの物件の現時点での価格を把握することが第一歩になります。

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不動産投資の売却に関するよくある質問

不動産投資の売却に関するよくある質問のイメージ
不動産投資の売却に関する、よくある質問をまとめました。
Q不動産投資は何年で売却するのがよいですか?
A 一概には言えませんが、所有期間が売却した年の1月1日時点で5年を超えると長期譲渡となり税率が下がるため、税負担の観点では一つの目安とされています。減価償却や相場、収支もあわせて判断しましょう。
Q賃貸中でも売却できますか?
A できます。入居者がいるまま「オーナーチェンジ」として売却する方法が一般的です。賃貸借契約や敷金は買主に承継されます。
Q売却益が出なければ税金はかかりませんか?
A 減価償却により取得費(簿価)が下がっているため、売却価格が購入価格を下回っても譲渡所得が生じ、課税される場合があります。損失でも申告しておくと他の不動産の譲渡益と相殺できる場合があるため、売却後は申告の要否を税理士等に確認しましょう。

まとめ

不動産投資の売却ガイドのまとめのイメージ
不動産投資の売却価格は、収益還元法と銀行評価の影響を受けやすく、マイホームとは決まり方が異なります。減価償却の影響で利益が出ていなくても課税される場合がある点、費用・税金を差し引いた手取り(手残り)で判断する点が投資用ならではのポイントです。賃貸中やローン残債があっても売却できるのが一般的です。まずは信頼できる会社の査定で、今の価格を把握することから始めましょう。

【免責表記】本コラムは情報提供を目的としたものであり、特定の不動産の売買・投資を推奨するものではありません。税制・法令・市況は2026年7月時点の情報に基づいており、今後変動・改正される可能性があります。実際のお取引・税務申告にあたっては、専門家にご相談ください。

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