「金利が上がると不動産価格は下がる」と耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。実際、投資用マンションは買主の多くが金融機関の融資を利用して購入するため、金利変動の影響を受けやすい資産です。金利が上昇すると毎月の返済負担が増え、買主が組める融資額が減少するため、不動産価格の下落要因になりやすくなります。
ただし、投資用マンションの価格は実需向けマンションのように「住みたい人の需要」で決まるわけではありません。価格を判断するのは投資家や不動産会社であり、「いくらの家賃収入を生むか」「いくらまで融資が付くか」という収益性と銀行評価が重要な判断基準になります。
また、家賃相場の上昇や都心部の賃貸需要の強さなど、価格を下支えする要因も存在します。そのため、「金利が上がったから必ず値下がりする」とは限りません。 本記事では、金利上昇が投資用マンション価格に与える影響や価格が動く仕組み、売却を検討する際に押さえておきたい判断ポイントをわかりやすく解説します。
金利上昇は投資用マンション価格の下落要因になる
結論から言えば、金利上昇は投資用マンション価格にとって下落方向に働く要因です。金利が上がると、買主が同じ返済負担で借りられる金額が減り、投資家が求める利回りも上がるため、価格は下がりやすくなります。これが「金利と不動産価格は逆相関」と言われる理由です。 ただし、価格は金利だけで決まるわけではありません。実際には、インフレによる資産価格の押し上げや、賃貸需給の締まり(家賃の上昇)、エリアごとの供給量といった他の要因との綱引きで決まります。金利が上がっても、家賃の上昇や需給の引き締まりがそれを相殺し、価格が大きく下がらないケースもあります。 また、同じ不動産でも、実需向けのファミリーマンションより投資用マンションのほうが金利の影響を受けやすい傾向があります。投資用マンションは購入の判断が利回り(収益性)と融資条件に直結しているため、調達金利の変化が買主の購入余力と要求利回りの両面に効くからです。
金利上昇が投資用マンション価格を押し下げるメカニズム
ここからは、金利上昇がなぜ価格に効くのかを、投資用マンションの文脈で以下3つに分解して見ていきます。
- 買主の借入可能額
- 投資家が求める利回り
- 銀行の融資姿勢
金利が上がると買主の借入額が減り、不動産価格が下がりやすくなる
投資用マンションの買主の多くは、金融機関の融資(不動産投資ローン)を使って購入します。金利が上がると、同じ毎月の返済額でも返済に占める利息の割合が増えるため、借りられる金額(借入可能額)が小さくなります。 借入可能額が減ると、買主が物件に出せる上限価格も下がります。自己資金が同じでも、ローンで組める金額が小さくなれば、トータルで提示できる金額は下がるためです。買主一人ひとりの予算が下がることで、市場全体としても成約価格が下がりやすくなる、という流れです。銀行評価が売却価格の上限になる仕組みについて詳しく知りたい方は、「投資用マンションの売却相場はどう決まる?収益還元・利回り・調べ方を解説」もあわせてご覧ください。
投資家が求める利回り(キャップレート)が上がり、不動産価格が下がる
投資用マンションの価格は、収益還元法(家賃収入から逆算する考え方)で評価されることが多く、おおまかには次の関係になります。
金利が上がると、投資家はより高いリターンを求めるようになり、キャップレートが上がります。家賃(分子)が同じでも、キャップレート(分母)が上がれば、計算上の価格は下がります。 簡単な例で見てみましょう。年間の純収益が60万円の区分マンションの場合、次のようになります。
- キャップレート4.0% … 60万円 ÷ 4.0% = 1,500万円
- キャップレート5.0% … 60万円 ÷ 5.0% = 1,200万円
このように、家賃が変わらなくても、求められる利回りが1ポイント上がるだけで価格が下がる計算になります。
数値は説明用に単純化したモデルケースです。実際の評価は立地・築年数・賃貸状況などにより異なります。
銀行の融資姿勢が厳格化し買い手が絞られる
金利上昇局面では、金融機関の融資姿勢が慎重になりやすい点も価格に影響します。返済負担の増加を見込んで、融資の審査基準(年収・自己資金比率・物件の収益性評価など)が厳しくなる傾向があるためです。 審査が厳しくなると、ローンを使って購入できる投資家の数が絞られます。物理的に買える人が減れば、その物件に対する需要も縮み、価格が下がりやすくなります。つまり金利上昇は、「一人あたりが出せる金額」と「買える人の数」の両面から需要を縮める方向に働きます。融資が付きにくい物件が売れないときの対処法について詳しく知りたい方は、「投資用マンションが売れない8つの原因と対処法|値下げ・買取切替の判断基準まで解説」もあわせてご覧ください。
日本の金利動向と今後の見通し
日本銀行は、2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後は段階的に政策金利を引き上げる局面に入りました。2025年12月の金融政策決定会合では政策金利を0.75%程度へ、2026年6月の会合ではさらに1.00%程度へ引き上げています(いずれも公表時点の情報)。1.00%という水準は、1995年以来およそ31年ぶりの高さとされています。 今後の見通しについては、物価・賃金・為替の動向を見ながら判断されるため、利上げのペースや到達点を正確に予測することは困難です。市場では追加の利上げを見込む見方もありますが、見送りや据え置きの可能性もあり、断定はできません。最新の方針は日本銀行の公表資料で確認することをおすすめします。 金利の先行きが不透明なときほど、買主は将来の調達金利の上昇を織り込んで慎重になりやすく、それが投資用マンションの需要や価格に影響します。次に、過去の金利上昇局面で価格が実際にどう動いたのかを振り返ります。
日本銀行 金融政策
不動産価格が今後下がるかどうかの見方について詳しく知りたい方は、「不動産価格は今後下がる?投資用マンションの下落要因・下支え要因と売り時を解説」もあわせてご覧ください。
過去の金利上昇局面で不動産価格はどう動いたか
過去を振り返ると、金利の動きと不動産価格は単純な一対一の関係ではありませんでした。1980年代後半のバブル期には、金融緩和と過剰な融資、強い需要が重なって地価・不動産価格が急騰し、その後の金融引き締め(公定歩合の引き上げ)や総量規制をきっかけに価格が大きく下落しました。 一方で、金利が低くても需給やインフレ、エリアの人気度によって価格が動いた局面もあります。歴史的に見ると、金利は重要な要因の一つではあるものの、不動産価格は需給・インフレ・金融政策が組み合わさって決まってきた、というのが実情に近い理解です。 したがって、「金利が上がったから必ず暴落する」と単純化するのは適切とは言えません。金利は下押し要因として意識しつつ、需給や家賃の動向とあわせて判断することが大切です。東京の投資用マンション価格・利回りの推移について詳しく知りたい方は、「東京のマンション価格はいくら?投資用ワンルームの相場・利回り・売り時を解説」もあわせてご覧ください。
金利上昇局面での投資用マンションの売却タイミングの考え方
金利上昇局面では、「買主の融資が出やすいうちに動く」という選択肢が一つの考え方になります。融資環境が厳しくなる前のほうが買い手が動きやすく、需要が見込めるケースがあるためです。 ただし、金利の見通しだけで慌てて動くのが得策とは限りません。投資用マンションの価格は、銀行評価と現行賃料(収益還元法)を軸に決まります。自分の物件の銀行評価や現行賃料の水準を踏まえ、実質手取り(諸費用・税金を差し引いた手取り)で判断することが大切です。表面的な売り出し価格や金利のニュースだけに反応せず、冷静に検討しましょう。そのうえで、金利上昇局面で特に注意したい点を次に紹介します。何年目に売るのが最適かについて詳しく知りたい方は、「投資用マンションの売却タイミングはいつが正解?何年目に売るのが最適かを解説」もあわせてご覧ください。
【要注意】金利上昇=暴落とは限らない|家賃や需給の影響も考慮しよう
「金利が上がる=暴落」と単純に結びつけるのは避けたい 金利上昇は価格の下押し要因ですが、「金利が上がる=暴落」と単純に結びつけるのは避けたいところです。インフレ局面では家賃が上昇したり、賃貸需給が締まったりすることで、金利上昇による下押しを一部相殺することがあるためです。 「暴落するかもしれない」という不安だけで売り急ぐと、本来得られたはずの手取り金額を大きく下げてしまう可能性があります。値下げは買主の指値(交渉)に応じる形で段階的に検討し、短期間に自分から何度も価格を下げることは避けるのも有用です。金利のニュースに振り回されず、自分の物件の収益力と相場をもとに判断しましょう。
出口戦略・トータル損益で考える売却タイミングについて詳しく知りたい方は、「不動産投資の売却タイミングはいつ?出口戦略・トータル損益で考える判断軸を徹底解説」もあわせてご覧ください。
金利動向を踏まえた売却判断の第一歩は「今の価格」を知ることから
金利局面での売却を考えるうえで起点になるのは、「自分の物件が今いくらで売れそうか」という現在価格の把握です。価格の目安がわかれば、急いで動くべきか、もう少し待つべきかを落ち着いて判断しやすくなります。
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金利上昇と不動産価格に関するよくある質問
最後に、金利上昇と不動産価格に関するよくある質問を紹介します。
Q金利が上がったら今すぐ売るべきですか?
A 金利が上がったからといって売却すべきとは限りません。家賃・銀行評価・エリアの需給によって、適したタイミングは変わります。まずは現在価格の把握から始めるのが現実的です。
Q金利上昇は売主と買主のどちらに不利ですか?
A 買主の融資余力が下がるため、売主は需要が減りやすいという形で影響を受けやすくなります。
Q変動金利の上昇は中古マンション価格に影響しますか?
A 影響しやすいと考えられます。多くの買主が融資を使うため、調達金利の上昇は中古の投資用マンションの需要・価格にも波及します。
Q新築と中古ではどちらが影響を受けやすいですか?
A 一般的には、投資用の中古マンションは利回りで比較されやすく、金利の影響を受けやすい傾向があります。
Q都心マンションも値下がりしますか?
A 金利上昇は下押し要因ですが、都心は賃貸需要や供給不足によって下落幅が限定的なケースもあります。
まとめ
金利上昇は、買主の借入余力の低下、投資家の要求利回り(キャップレート)の上昇、銀行の融資姿勢の厳格化を通じて、投資用マンション価格の下押し要因になります。ただし、投資マンションの価格は金利だけでなく、需給やインフレ、家賃動向との綱引きで決まるため、「金利上昇=暴落」と単純化するのは避けたいところです。日本銀行は2024年のマイナス金利解除後、段階的に利上げを進めていますが、先行きは不透明で、ペースを正確に予測することはできません。売却を考える際は、金利のニュースだけに反応せず、銀行評価・現行賃料・実質手取りをもとに冷静に判断することが大切です。まずは今の価格を知ることから始めましょう。
【免責表記】本コラムは情報提供を目的としたものであり、特定の不動産の売買・投資を推奨するものではありません。税制・法令・市況は2026年6月時点の情報に基づいており、今後変動・改正される可能性があります。実際のお取引・税務申告にあたっては、専門家にご相談ください。
この記事の監修者
劔持 虎太郎
宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士/管理業務主任者
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者の国家資格を保有する不動産の専門家。都心・湾岸エリア(港区・中央区など)で約16年にわたり、マンション・戸建て等の一般住宅から事業用物件までの売買・賃貸・建物管理の全領域に及ぶ実務経験を積み重ねる。物件の資産価値評価から運用・管理トラブルの防止まで、現場に根ざした的確なアドバイスを提供する。専門性の高いノウハウをわかりやすく発信し、安全で納得感のある不動産取引の実現に寄与している。
品川 雄飛
宅地建物取引士/管理業務主任者/マンション管理士/賃貸不動産経営管理士/ビル経営管理士/競売不動産取扱主任者/貸金業務取扱主任者/2級ファイナンシャルプランニング技能士/測量士
住居、投資、駐車場、事業用を問わず、賃貸・売買から管理受託まで幅広い実務経験を駆使し、現在は売買仲介業務に従事。
多岐にわたる不動産実務と専門知識に基づく、多角的なリスク分析と価値向上の提案を強みとしている。
最新のマーケット動向や金融の知見も踏まえた戦略的なアプローチで、顧客の長期的なビジョンに寄り添い、最適な不動産取引を実現している。