不動産投資・運用

不動産投資の売却益とは?計算方法・税金・手取り額シミュレーションを徹底解説

不動産投資の売却益は税法上の譲渡所得であり、取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。減価償却で取得費が目減りするため、売却価格と購入価格の差以上に譲渡益が膨らむケースが多く、「売却益が出ていないと思っていたのに譲渡所得税が発生する」という落とし穴に注意が必要です。

本記事では、売却益の計算方法・税率・手取り額の試算・節税のコツを整理します。

不動産投資の売却益とは

売却益とは

不動産投資の売却益は、税法上「譲渡所得」と呼ばれ、物件を譲渡したことによる収益を指します。一般には「キャピタルゲイン」とも呼ばれます。家賃収入による定常的な「インカムゲイン」と対をなす概念で、出口戦略における収益の重要な要素です。

売却益(譲渡所得)= 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

ポイントは、「売却価格 − 購入価格」ではなく「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算するという点です。取得費は減価償却で目減りするため、購入価格よりも低くなるのが通常です。これが、譲渡所得が想定より大きく出る原因となります。

国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法

不動産投資の売却益の計算方法

売却益の計算方法

譲渡所得は、次のシンプルな式で求められます。

譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

ここからは、この式を構成する3つの項目を一つずつ見ていきましょう。

取得費|減価償却を考慮した計算が必要

取得費は「購入価格+取得時諸費用」から「建物部分の減価償却累計」を差し引いて計算します。減価償却の仕組みは以下のとおりです。

  • 土地:減価しないため、購入時の価格がそのまま取得費に反映される
  • 建物:法定耐用年数に応じて毎年一定額が減価償却され、簿価が下がる

たとえば、建物部分1,100万円の鉄筋コンクリート造ワンルームを購入し賃貸運用した場合、法定耐用年数47年・定額法(償却率0.022)の前提で、毎年約24.2万円が減価償却されます。12年経過時点では減価償却累計は約290万円に達し、建物簿価は約810万円まで下がります。土地と合わせた取得費は購入価格より290万円ほど目減りする計算です。

「購入価格と売却価格にあまり差がないから、譲渡所得はほぼ出ないはず」と思っていても、減価償却の影響で数百万円規模の譲渡所得が発生するケースは珍しくありません。土地と建物が一括契約で按分が不明な場合、固定資産税評価額の比率や、契約書の消費税額から建物価額を逆算する方法で按分することが多いです。

ただ、按分方法は取得時資料や個別事情により判断が分かれるため、不明な場合は税理士等に確認しましょう。

国税庁 No.3252 取得費となるもの

取得費がわからない場合は売却価格の5%を概算取得費にできる

購入時の契約書や領収書が紛失しており、取得費の証明ができない場合、「売却価格の5%」を概算取得費として申告できます。ただし、これは最終手段であり、安易に使うべきではありません。

概算取得費5%ルールは税額が大きく膨らむ

2,400万円で売却した物件で概算取得費5%ルールを使うと、取得費はわずか120万円。譲渡費用が84万円としても、譲渡所得は2,196万円となり、長期譲渡で約446万円、短期譲渡なら約870万円もの譲渡所得税が発生します。実際の取得価格が2,000万円だった場合と比較すると、税額の差は数百万円規模になります。

書類が見つからない場合でも、まずは仲介会社・司法書士・金融機関への問い合わせや、過去の通帳・住宅ローン契約書の確認など、取得価格を証明できる資料を徹底的に探すことが先決です。「とりあえず概算5%で出せばいい」という認識で進めると、予想以上の大きな損失につながる可能性があります。

国税庁 No.3258 取得費が分からないとき

譲渡費用|含められる項目を要チェック

譲渡費用として認められる代表項目は以下のとおりです。

  • 仲介手数料
  • 売買契約書の印紙代
  • 測量費
  • 立退料
  • 古家の解体費用

一方、修繕費・固定資産税精算金・引越し費用・売却前のリフォーム代は、一般的には譲渡費用に含められません。譲渡費用の計上漏れは譲渡所得を膨らませるため、領収書ベースで漏れなく集計しましょう。

国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの

不動産投資の売却益にかかる税金

売却益にかかる税金

不動産投資の売却益(譲渡所得)には、所有期間に応じて譲渡所得税が課税されます。

区分 所有期間 税率 内訳
短期譲渡所得 5年以下 39.63% 所得税30% + 復興特別所得税0.63% + 住民税9%
長期譲渡所得 5年超 20.315% 所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%
所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定

実日数で5年超でも、1月1日基準で5年経過していなければ短期譲渡となります。この点は売却タイミングを決める際に必ず確認しましょう。

このほか、印紙税・登録免許税・消費税(課税事業者の場合)も発生します。不動産投資の売却益にかかる税金について詳しく知りたい方は、不動産投資の売却でかかる税金はいくら?個人・法人の違いと節税のコツを徹底解説をご覧ください。

不動産投資の売却益シミュレーション|手取り額の試算

売却益シミュレーション

ここからは、3つのケースを例に挙げ、不動産売却時の税引後手取り額をシミュレーションします。

①長期譲渡で売却益が出た場合

購入価格2,000万円の不動産を、2,400万円で売却した場合の売却益をシミュレーションしてみましょう。

購入価格2,000万円(建物1,000万円/土地1,000万円、賃貸用RC造マンション)
売却価格2,400万円
譲渡費用84万円
所有期間12年(長期譲渡)
建物減価償却累計約264万円(1,000万円×0.022×12年)
取得費2,000万円 − 264万円 = 1,736万円
譲渡所得2,400万円 −(1,736万円 + 84万円)= 580万円
譲渡所得税 = 580万円 × 20.315% ≒ 約117.8万円

手取りは、2,400万円 − 84万円 − 117.8万円 = 約2,198.2万円となります。

②短期譲渡で売却益が出た場合

①と同じ物件条件で、所有期間4年の短期譲渡だった場合をシミュレーションしてみましょう。

建物減価償却累計約88万円(1,000万円×0.022×4年)
取得費2,000万円 − 88万円 = 1,912万円
譲渡所得2,400万円 −(1,912万円 + 84万円)= 404万円
譲渡所得税 = 404万円 × 39.63% ≒ 約160.1万円

手取りは、2,400万円 − 84万円 − 160.1万円 = 約2,155.9万円です。譲渡所得自体は所有4年のほうが少ないものの、税率が高いため税負担が大きくなります。所有期間12年(長期譲渡)の場合と比べて、税額は約42万円多く、手取りは約42万円少なくなる計算です。

③減価償却の影響で売却益が膨らんだ場合

減価償却によって取得費が減ってしまったケースを見てみましょう。

購入価格2,100万円(建物1,050万円/土地1,050万円、賃貸用RC造マンション)
売却価格2,100万円(購入時と同額)
譲渡費用84万円
所有期間12年(長期譲渡)
建物減価償却累計約277万円(1,050万円×0.022×12年)
取得費2,100万円 − 277万円 = 1,823万円
譲渡所得2,100万円 −(1,823万円 + 84万円)= 193万円
譲渡所得税 = 193万円 × 20.315% ≒ 約39.2万円

この場合、「購入価格と同じ金額で売却したから損益はゼロ」と思っていても、減価償却の影響で193万円の譲渡所得が発生し、約39万円の譲渡所得税が課税されます。さらに、購入価格を下回る金額で売却した場合でも、値下がり幅と譲渡費用の合計を減価償却累計が上回れば譲渡所得が発生し、納税が必要になるケースがあります。

「売却益が出ていない=確定申告も納税も不要」と早合点しないように注意しましょう。

不動産投資の売却益を最大化するポイント

売却益を最大化するポイント

ここでは、不動産売却時の税引後の手取りを増やす3つの基本施策を整理します。

長期譲渡になるまで売却を待つ

税率がほぼ2倍違うため、長期譲渡への切り替えを待つことで税負担を半分に抑えられます。1月1日基準の判定を忘れずに、決済日を組み立てましょう。

取得費・譲渡費用を漏れなく計上する

購入時の諸費用(仲介手数料・登記費用・不動産取得税・ローン事務手数料など)、売却時の諸費用(仲介手数料・印紙代・測量費・立退料など)を漏れなく計上します。「数万円程度だから」と諦めず、領収書ベースで集計することで、税額を数万円〜十数万円単位で減らせるケースもあります。

売却タイミングを市況と合わせる

長期譲渡への切替と、市況の良いタイミングを両取りできれば、税負担を抑えつつ売却価格も最大化を狙えます。家賃水準が上昇基調にあり、銀行評価が伸びているタイミングを狙うのが現実的な戦略です。

不動産投資の売却益に関する注意点

売却益に関する注意点

不動産投資の売却益にまつわる落とし穴を3つ整理します。

「売却益が出ている=全額手元に残る」ではない

売却益が出ても、譲渡所得税・住民税・印紙税などの税金や、仲介手数料・抵当権抹消費用などの諸費用が差し引かれます。手元に残る金額は、これらの税金・諸費用が差し引かれる前提で計画しましょう。

投資用不動産の場合特別控除は使えない

3,000万円特別控除は投資用には原則使えない

「マイホームを売ったときの3,000万円特別控除」「相続空き家(被相続人の居住用財産)を売ったときの3,000万円特別控除」など、不動産売却の節税策としてよく紹介される控除は、いずれも居住用や空き家を対象とした特例です。賃貸中の投資用不動産には原則として適用できません。

国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例

不動産投資の売却益が出たら確定申告が必要

譲渡益が出た年は、原則として確定申告が必要です。申告漏れがあると無申告加算税・延滞税のペナルティが発生します。必要書類は売買契約書・取得費および譲渡費用の領収書・登記事項証明書・過去の確定申告書(減価償却累計確認用)などです。詳細は投資マンションの売却後に確定申告は必要?書類・書き方・期限を初心者向けに徹底解説の記事をご覧ください。

不動産投資の売却益を正確に試算するには「売却価格」を知ることから

売却価格を知る

売却益と税引後手取りを試算するには、起点となる想定売却価格の把握が不可欠です。

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不動産投資の売却益に関するよくある質問

よくある質問

不動産投資の売却益に関する、よくある質問に回答します。

Q売却益はどのくらい出るのが一般的?
A

立地・購入時期・運用状況により大きく変わります。都心の区分マンションで所有10年以上のケースでは、物件により数十万〜数百万円の譲渡益が出るケースも多く見られますが、購入時の価格設定や市況の変動により異なります。

Q売却益が少ないと確定申告不要?
A

譲渡所得がプラスであれば、金額に関わらず申告が必要です。「数万円だから不要」ということはありません。譲渡損が出た場合でも、同年内に他の不動産譲渡益があれば内部通算のために申告するメリットがあります。

Q売却益の税金はいつ払う?
A

所得税・復興特別所得税は確定申告期限(翌年3月15日)までに納付します。住民税は翌年6月以降に市区町村から納付書が届き、一括または年4回分納で納付します。

まとめ

まとめ

不動産投資の売却益(譲渡所得)は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算し、取得費が減価償却で目減りするため、購入価格と同額や下回る金額で売っても課税されることがあります。

税率は長期譲渡(5年超)20.315%・短期譲渡(5年以下)39.63%で、所有期間は売却年の1月1日時点で判定します。取得費が不明な場合の概算取得費5%ルールは税額が大きく膨らむ最終手段なので、まずは書類探しを徹底しましょう。

【免責表記】本コラムは情報提供を目的としたものであり、特定の不動産の売買・投資を推奨するものではありません。税制・法令は2026年4月時点の情報に基づいており、今後改正される可能性があります。実際のお取引・税務申告にあたっては、専門家にご相談ください。

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