2017.02.16
マンションの売り出しや価格交渉を経て、いよいよ引き渡しとなると、マンション売却も大詰めです。マンション売却の際、引き渡しによるトラブルが起こらないよう、今回はマンション売却で物件を引き渡す際の注意点をお伝えします。
物件の引き渡しは売買契約から約1~2カ月後
買主側と金額面で折り合いがついたら、正式な売買契約を結びます。しっかりと関係書類に目を通し、わからない点があれば仲介業者に確認しましょう。一度売買契約を締結すると簡単にはキャンセルできません。
また、注意しておきたいのは、売買契約を結んでもすぐに代金が振り込まれるわけではないということ。買主側の住宅ローンの状況にもよりますが、だいたい売買契約から1~2カ月後に残金の決済をして引き渡しとなることがほとんどです。
売買契約の締結は仲介した不動産業者の立ち会いにより、不動産会社の店内で行われるのが一般的です。
契約に必要な売買契約書などは基本的に業者が用意しますが、売主本人が用意しておかなければならない書類等もあります。マンションの売却で必要になる主な書類は以下の通りです。
・身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票
・登記済権利書または登記識別情報
・固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書
・マンションの管理規約、または使用細則など
・マンションの維持費等の書類(管理費、修繕積立金、管理組合費、町内会費、等)
・耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書等
・その他の書類(購入時の契約書・重要事項説明書、販売時のパンフレットや広告等)
いざ契約日になってバタバタしないように、しっかりと準備をしておきましょう。
必要書類のうち、登記申請は一般的に司法書士に委任します。この準備を怠ると、契約書で定めた期日に所有権移転登記ができなくなるので注意しましょう。
重要事項確認は不動産業者立ち会いのもとで
契約締結時はまず、不動産業者の営業担当者が契約書を口頭で読み上げ、契約内容に間違いがないかどうか確認します。売買金額、引き渡しの時期、ローン特約、瑕疵担保責任など、物件の売却において重要な内容が明記されている「重要事項説明書」と「売買契約書」には、しっかりと目を通してください。
重要事項説明書でチェックすべき主なポイントは以下の通りです。
(1)売買物件の表示
間取りや物件の詳細など、実際の物件と表示されている情報に間違いがないかを確認しましょう。
(2)売買代金、手付金等の額、支払日
売買代金や手付金等の金額や買主の支払日をしっかりと確認します。とくに手付金については、その取り扱いをしっかりと確認して後のトラブルを防ぎましょう。
(3)所有権の移転と引き渡しの時期
買主、売主両方の引っ越しの予定などを踏まえて、引き渡しの時期に問題ないか確認しましょう。
(4)付帯設備等の引き継ぎ
中古マンションの場合は、照明やエアコンなど、室内の設備の状況を明確にし、しっかりと引き継ぎをしておく必要があります。こうした付帯設備等の引き継ぎをめぐるトラブルは意外と多く発生します。故障がないかどうかなども確認します。
(5)負担の消除
物件を完全な所有権のもとで取得できるのかどうかを確認しておく必要があります。テナント等が入居している場合、テナントとの賃貸借契約に限り、買主に引き継がれますが、この場合は引き継ぐ権利と引き継がない権利を明確にしておきましょう。
(6)引き渡し前の物件の滅失・毀損(きそん)(危険負担)
売買契約締結後に、天災で建物が全壊するなど、売主にも買主にも責任のない理由による損害を受けた場合について取り決めます。一般的には売主が修復したうえでの引き渡しとなりますが、滅失や毀損がはげしい場合は契約を解除することもできます。
(7)瑕疵担保(かしたんぽ)責任
売買物件に、欠損などの瑕疵が発覚した場合、売主は物件の修補や損害を賠償する義務が発生します。この瑕疵担保責任は期間が短いほど売主に有利に、長いほど買主に有利になります。こうした瑕疵をめぐるトラブルは非常に多いため、しっかりと契約内容を確認しましょう。
契約書の内容に問題がなければ、売主・買主の双方が書類に署名・押印し、手付金の受け渡しを行います。契約書の確認だけでも1時間以上は掛かります。すべてが終了するまで2時間~3時間くらい見ておきましょう。
手付金の相場は?
手付金の相場は?
現金での一括支払いの場合を除き、売買契約時点では、手付金のみを受け取ることになります。手付金とは、「頭金」のようなものです。手付金の額は法律などで決められているわけではないので、買付証明書などで売主・買主の双方で取り決めます。以前は売買価格の10%~20%が手付金の額として一般的でしたが、最近では住宅ローンで全額借り入れする人も珍しくなく、手付金の額は減少傾向にあります。
しかし万が一、売買契約締結後に売主・買主どちらかの都合で契約をキャンセルする場合、手付け解除というペナルティを受けることになります。
この手付け解除では、キャンセルする方が手付金の額に応じた違約金を支払わなければなりません。買主都合でキャンセルする場合は手付金の全額、売主都合の場合は手付金として受け取った額の2倍が違約金となります。
手付金の額を50万円や100万円という小額に抑えるケースが増えているのは、こうした背景があります。
買主の住宅ローンの進捗状況を確認する
買主が住宅ローンを利用する場合、売買契約時にまず手付金だけを受け取り、後日残金の決済と同時に物件を引き渡すというのが一般的です。
決済の時期は、住宅ローンの進捗状況によって大きく変わってきます。一般的に、売買契約の時点で買主側は銀行の仮審査程度は通過しているため、売買契約から1カ月程度で決済が行われます。
売買契約後に住宅ローンの仮審査に申込むという場合は、本承認がおりるまでに相当な日数が掛かることがあります。そうなると、決済日は売買契約から2カ月以上掛かるケースもあります。そのため正式な売買契約を結ぶ前、買付証明書をもらった時点で、まず買主の住宅ローンの進捗状況を必ず確認しておくことをおすすめします。売買契約までに仮審査を通過し、売買契約後すぐに本審査に移行できる状態が理想的です。
また不動産売買には、「ローン特約」というものがあり、売買契約を結んだ後でも、住宅ローンの審査が通らなければ、手付け解除などのペナルティ無しで契約そのものを破棄することができます。そのため複数の購入希望者から買付証明書が提出されている場合は、住宅ローンの進捗状況が選択基準の1つとなります。
鍵の引き渡し後は一切立ち入りできない
買主が住宅ローンを借り入れる金融機関で、売主・買主・仲介不動産会社・司法書士・銀行担当者が一堂に介して残金の決済と物件の引き渡しを行います。まず銀行から買主に住宅ローンの融資が実行され、それを売主へ支払うという形になります。
売主は、残代金の領収書と所有権移転登記に必要な書類一式を買主に引き渡し、一般的には司法書士が所有権移転登記を申請します。売却する物件に抵当権が設定されている場合は、抵当権抹消の登記も同時に行われます。公租公課(固定資産税と都市計画税)、管理費などは、引き渡し日の前日までを売主の負担、引き渡し日以降を買主の負担として、日割り精算を行います。
こうした流れが済むと、実測図や建築関係書類、物件の鍵、付帯設備の保証書・取り扱い説明書、その他の書類とともに、物件の鍵を買主に渡します。鍵の引き渡しがおわると、物件へは一切立ち入りできません。荷物の移動やリフォーム作業などは決済前にすべておわらせておきましょう。
引き渡しが無事に完了したら、不動産会社との媒介契約に基づいて、仲介手数料を支払います。中には売買契約時に仲介手数料を支払うケースもあるため事前に確認しておきましょう。
おわりに
今回は、マンション売却で物件を引き渡す際の流れや注意点についてご紹介しました。自分の物件が無事に売れたことにホッとする気持ちもありますが、鍵の引き渡しまでがマンション売却です。ゴールはもうすぐ、最後までしっかりと準備をして臨みましょう。