2017.02.14
中古マンションを売却する際には、取引方法として「買取」と「仲介」の2種類があります。買取業者が直接不動産を買い取ってくれる「買取」と、仲介業者が不動産の買主を探してくれる「仲介」には、それぞれにメリットやデメリットがあります。
今回は「買取」によってマンションを売却する際に、どのような流れで買取業者に依頼するのか、また売却のタイミングなどについてご紹介します。
マンションの「買取」とは?
買取では、マンションの買主を探す必要がないので、価格さえまとまればすぐに売却することができます。多くの場合、2週間~1カ月程度で取引が完了します。
不動産業者と媒介契約を結んで広告掲載などの手段で買主を探す方法(「媒介」「仲介」といいます)だと、買主がすぐに見つかるとは限らないので、売却まで数カ月~1年ほどかかることもあります。「まとまった現金が必要なので、すぐに不動産を売却したい」という方の他、なんらかの事情があって「近所や知人などに知られず物件を売却したい」という方に、買取は人気の売却手段です。
また買取の場合、物件のオーナーはいったん業者に売却することで、瑕疵担保責任(一定期間内に故意ではない物件の故障が発生した場合、売主がその責任を負い、修繕費用を出さなくてはならないという責任)を免れることができます。
築年数が古い物件の場合、責任を担保しなくてはならないようなリスク(雨漏りや配管の不良など)が発生する可能性があるので、買取がおすすめといえます。
また買取の場合、不動産仲介での取引の際に発生する「不動産仲介手数料」も節約できます。例えば、3000万円の物件の場合、「仲介」であれば手数料だけで最大100万円前後もの支払いが生じるのが一般的です。
一方、買取にかかるのは、契約書に貼付する印紙代、ローン抵当権抹消登記等で司法書士に依頼する費用などのみで、両方合わせても10万円前後におさえることができます。
ただし、買取で不動産を買い取る業者は、購入した不動産をリフォームするなどして、さらに購入希望者に売却するため、当然ながら仕入れ値となる物件の価格を安くおさえようとする傾向にあります。そのため買取の場合、一般的に買い取り価格は仲介による売却価格よりも安くなります。
しかし業者によってはその後のリフォームで価値を高めた上で販売するため、買取価格を高めに見積もってくれるケースもあります。
情報収集で売却のタイミングを計る
マンションの買取を依頼するタイミングは人によってさまざまですが、その価格は市場の動向や周辺施設の変化、ときには運にも左右されます。
一般的にマンションの購入最盛期といわれるのは2月~3月です。会社での人事異動や進学など、ライフステージが変化しやすい4月に合わせてマンションの購入が行われます。そして金利の変動や、オリンピックの開催などもマンションの価値を変動させる要因となるため、市場ニーズの変化も合わせて売却までの計画を行うことがマンションの価値を高めるポイントといえます。
またマンションの売却価格はエリアの特性に大きく左右されます。
近所に新たなショッピングモールができる、最寄りの駅の路線が増えるなど、物件の利便性が高まるような環境の変化が起こる場合、マンションの価値は高まります。
買取による不動産売却までの流れ
不動産の「買取」では、新聞の折り込みチラシやネットの不動産取引サイトなどでの広告宣伝活動を一切行わず、直接不動産買取業者に売却します。
一般的な不動産買取の流れは以下のようになります。
(1)価格の査定
まずはどのくらいの価格で売却できそうか、業者間の見積りを取り、これを「査定」といいます。査定はできるだけ多くの業者に依頼して見積りを出してもらうのが良いですが、仕事などで忙しい中、何社もの不動産業者と打ち合わせるのはなかなか大変です。そうした際に便利なのが、ネット上で複数の業者から査定を受けられるサービスです。あくまで間取りや立地条件、築年数などから算出した参考価格ですが、ある程度の相場観の参考になります。
(2)買取価格の提示
業者が物件を訪問し、実際に建物の状態や内装などをチェックします。周辺環境(暮らしやすさ)、近隣の相場、接道状況や給排水(下水道等)の確認のほか、役所で土地や建物の法令規制の確認、法務局で謄本や公図を取得します。こうした現場調査・役所調査完了後、正式な買取価格が決定します。
(3)打ち合わせ
業者が決まったら、売買スケジュール等の打ち合わせをします。売却のメリットは、売主の都合に合わせたスケジュールで売却できることです。
売買契約時には、契約書の内容の確認と署名・押印をし、一般的に、業者から契約金額の5%~10%の手付金が支払われます。
(4)書類を準備する
売主は、登記識別情報(権利証)・印鑑証明書・実印・評価証明書等、売却に必要な書類を準備します。
(5)残金の決済、引き渡し
契約後、銀行で残金の決済を行います。決済時には、売買代金から手付金を差し引いた残金が支払われます。
仲介から買取に切り替えることも
マンションを売却する際に、「最初に仲介で媒介契約をし、ある一定のリミットまでに売れなかったら売却に切り替える」という方法も可能です。その場合、仲介してもらった不動産会社にそのまま買い取りを委託すれば、一から買取の手配を始める手間は省けます。しかし、仲介と買取では条件が異なり、業者の得手不得手もあるため慎重になる必要があります。
可能であれば査定からやり直し、より良い買取価格を提示してくれる業者を選ぶか、あらかじめ仲介で家を売り出すときに、ある程度の期間で買主が決まらなければ売却も検討しているということを伝えておきましょう。
ゼロ金利は不動産売却にプラスか?
不動産売却のタイミングを計る指標の一つが金利です。
2016年1月、日銀が、これまで例を見ないマイナス金利を導入し、その後、2月9日、住宅ローン固定金利の指標となる10年もの国債の利回りが、初めてマイナスとなりました。
金利が下がったことで、お得に銀行からお金を借りられるチャンスとなり、住宅購入を考えていた買主の動きが活発になると予想されます。国債の利回りがマイナスになったことで株価も低調な現在、資産運用の手段として不動産投資を始めようという人も増えると考えられます。
買いたい人が増えれば、その分値段が上がるのが経済活動の原則。マンション売却をする人にとっては、売却価格の上昇が見込める現在は、まさにマンションの売り時といえるかもしれません。
おわりに
マンションの売却は、前向きな理由ばかりではありません。「とにかく早く現金化したい」「どうしてもある期限までに現金化しなくてはならない」「仲介に出しているが、なかなか買主が見つからない」「親戚や同僚、近所に売りに出しているのを知られたくない」「築年数が古く状態が良くない」「何件も内覧希望がきて、いちいち対応するのがわずらわしい」「できるだけ手間をかけずに取引したい」などの希望でマンション売却する方に、買取はおすすめの方法です。
買取によるマンション売却の査定価格から業者を選ぶとき、適切な判断を下すには相場を知る必要があります。特に、買取は業者との直接取引になるので、マンション売却に精通した業者と取引をしないと、満足いく価格で売却できない場合があります。
また、仲介で売り出した後売却に切り替える際にも、買取の経験豊富な業者なら、あらゆる情報をもとに安心して手続きをすすめることができます。しっかりとした査定をしてくれる信頼できる買取業者を選び、適切なタイミングでマンションを売却できるよう計画を立ててみましょう。