2017.01.15
日本では、現在TPP(環太平洋経済連携協定)への参加が協議されています。TPPとはTPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership AgreementもしくはTrans-Pacific Partnership=環太平洋戦略的経済連携協定)といい、日本を含めたアメリカなど環太平洋の経済連携協定のことです。TPPは、参加国の関税を撤廃し、貿易や商取引のルールを統一し共有するための取り組みです。日本は交渉に参加していますが、TPPに参加するかどうかは未だ明確にされていません。もし日本がTPPに参加した場合、マンションの賃貸市場にはどのような影響があるのでしょうか。
今回は、不動産投資とTPPの関係についてご紹介します。
TPPにより外国の資金が日本に流入
TPPの大きな特徴として、参加国の関税を撤廃する点があります。関税を撤廃することで海外の資金が日本に流入し、さまざまな分野への投資が活発化すると考えられます。不動産投資も同様で、海外資本が日本の商業施設やマンションなどの不動産へ投資することにより、不動産市場はさらに活発化するでしょう。海外からの需要が伸びることで、不動産物件の値上がりの可能性もあるといえます。関税がなくなることに加えて、アベノミクスによる円安傾向もあり、海外資本による日本への投資が過熱して良い物件の競争率はさらに高まることが予測されます。
不動産取引の制度変更の可能性
TPP交渉では、原則として全てのサービス分野を対象としています。不動産賃貸取引の特徴に、不動産仲介会社やオーナーへ敷金礼金が支払われる商慣習があります。日本がTPPに合意した場合、これらの商慣習が参加国の共通ルールとして見直され、撤廃される可能性があります。ただし、2012年国土交通省は「我が国の不動産取引の制度等がTPPによって変更されることはない」と見解を示していますが、今後の動向によりどのように変化するかは未知数なところがあります。仮に不動産の商慣習が見直された場合、日本の不動産取引の構造改革などが考えられるでしょう。
マンション賃貸市場への影響
TPPにより海外資本が日本へ流入する可能性に触れましたが、その結果、不動産市況が活発化する可能性は高くなります。国内外から多くのマンションが購入され、その多くは賃貸物件化するでしょう。その結果、供給とのバランスにより、家賃相場の値下がりの可能性もあります。家賃相場が値下がりすれば投資用賃貸物件のキャッシュフローが変動するため、家賃への影響は慎重に見守る必要があります。
また競争相手が増えることによる運営コストの上昇も懸念されます。より収益性が高く魅力的な物件にするため、施設の修繕などの検討や共用スペースへの管理費なども上昇するかもしれません。借主側からの目線を鑑みた場合、類似物件であれば、環境や住居、共用スペースなどがより魅力的な物件を選ぶでしょう。競争が激しくなれば、自分の所有している物件がより魅力的になるよう、不動産の商品価値をさらに上げていく努力が求められます。
おわりに
以上のように、TPPが合意され国土交通省の見解が大幅に変わった場合、マンションオーナーへも大きく影響することが考えられます。現在、国土交通省の見解では不動産取引の制度等は変更されることはないとされていますが、今後の動向には注意が必要です。
仮にTPPの影響によって敷金・礼金、更新料などの日本独自の商慣習が撤廃されると、海外資本はさらに日本の不動産市場に参入しやすくなるでしょう。ヨーロッパの情勢が不安定な今、海外投資家からすると日本の不動産市場は魅力的な市場と映るかもしれません。結果、物件の需要が高まることも考えられ、不動産物件価格の値上がりも予想されます。不動産市場が活性化することで賃貸物件市場も活発化してくるでしょう。マンション賃貸市場にさらなる注目が集まる日も近いかもしれません。